「プラモデルが好きだ!」 展示室


レベル 1/110 捕鯨船チャールズ W モーガン号
 この絵、だれが描いたか知らないけれど、箱絵としては傑作級だと思いませんか?この絵を見て買いたくなったもんなぁ・・・、箱開けると船体の大きさとしては出来上がったときに邪魔にならない大きさで、かといって小さすぎるわけではなし、おまけにボートやらなにやらごてごてついているのでボリューム感があり、お得な感じがしたので買ったのを今でも鮮明に憶えています。

 茶色くなってしまって折り目が穴だらけの組み立て説明書の解説者名には藤井冬木先生と橋本喜久男大先生様の名前が並んでいます。

 小さいキットの割には部品番号は120を超え部品点数は200個ぐらいはあるのではないかと思います。

 帆は白いプラバンをバキューム成型したやつと、索梯子はファイバーを芯にして並べた上に軟質の黒い樹脂で固めたものが入っていて、そのほかに糸張りのための糸が3種類入ったマルチマテリアルのキットです。

 50年以上前のキットの割には成型は細かく、経年の劣化でもろくなったプラはちょっとしたはずみで折れてしまうし、バキュで出来た帆は黄色く変色して色塗りの手間が省けた反面もろくなって割れやすく、組み立てには神経を使いました。

この船は復元船が現存しているのでキットの組み立てに参考になるのかと思いましたが、復元船の塗装は箱絵と違うし、ネット上でチャールズモーガンを検索すると出てくるのはこのキットの画像は1種類だけ、それ以外は木製キットの作例の画像が少しあるばかりで、塗装に参考になる資料がほとんどなく、それぞれてんでに勝手に塗ってある感じだったので、最初に惹かれた箱絵を唯一の資料として勝手に塗りました。

ちなみに付属している組み立て説明書の塗装解説も箱絵と違っているので頼りになりません。

 必要な部品はすべて入っているし帆を張ってしまうとのぞき込まなければわからないような舵輪までよく作りこんだキットで、バキューム成型のせいで省略されてしまっている前檣と主檣の一番下の帆の裏側の部分を追加する以外には手を加えるところはありませんでした。

 この2つの帆は全開ではなく折り畳み中の状態が表現されているのに、ちょうど最中の皮の半分のような状態に前半分が成型されているのみで後ろ半分は部品がついていないので箱絵を参考に成型用の型を作って追加する必要があります。

まぁ、もっともネット上にも資料がほとんどないキットなので何が足りていて何が足りないのかわからないというのが本当のところですけれど・・・。

 船体の左側はボートを下すデリックが3対並んでいて1番前のボートはカバーなしでオールが並べられた状態、後ろの2艘のボートはキャンバスがかけられた状態で再現されています。


 この七面倒くさい張り線の嵐には眼も神経もボロボロになったけれど、説明書通りに張り線を張っていくと、何となく帆船のマストのバランスを張り線によってどのようにしてとっているのか、なんとなくわかった気になりました。


 箱を無くしてしまうような保管状態だったため、付属しているはずの旗のシール(だったかどうかの記憶もない)は無く、旗はこの船が活躍していたと思しき1851年から1858年当時の米国旗を紙に印刷し、箱絵に描かれているようなしわを入れて貼り付けてあります。

 捕鯨船なので鯨油を採ったり、クジラを解体するであろう作業場が甲板にあり、その屋根の上には予備のボートが2台括り付けられているので、模型的にはボリューム感たっぷりです。(ドイツ戦車の上に予備キャタピラやら予備転輪が括られているのを見たときみたいな満足感ですかね。)

 後ろ側の上から見ると前2本のマストの一番下側の畳みかけの帆の裏側が違和感なく出来上がっているのが見えると思います。

 船体の右側はボートのデリックが1艘分ない代わりに、解体したクジラの肉を切断するための台がついているのと、多分解体時に出る内臓や血液を流しだすために舷側の一部が回転できるようになっていて、ご丁寧に可働します。

可動と言えばこのキット、手も入らなくなってしまって触れないのに、後部船室に下の舵輪と前部デッキの巻き上げ機のクランクのハンドルも可動します。

 このキット、作りづらくはあったけれどとてもよくできていて素材の選択もさることながら、索梯子の船体への取付のために取り付け部分をモールド部品で置き換えてそこに結び付けるとか、索の末端につながる滑車のセットをモールド部品で用意して塗分けて表現させるとか、キットの設計者がすごいのか、プラモメーカーとしての歴史がものを言っているのか、つくっていて感心させられました。

 一方で悔いの残るところも多く、糸張りで張りの強さの加減が分からず、強く張りすぎてマストが曲がったり部品を折っては補強して補修する手間を強いられたりしました。

 糸張りは「強く張りすぎないように注意しろ」と橋本大先生の説明書にも書いてあったんだけれど・・・、もう一隻作り直したらもっと満足にできる仕上がりになると思うけれど、もうそんな気力な残ってないなぁ・・・。
 モールドはとても繊細で、丁寧に塗り分ければ見栄え良く仕上がります。

 今回の製作で一番気に入ったのが船体の銅板張りの部分の色と、飾り台の青銅色仕上げです。


 飾り台は華奢な作りだったので前後をつなぐ角棒をタミヤの3ミリのコの字のプラ棒に変更し、コの字の溝の部分にプラバンを挿して渡し、がっしりした作りに変更しました。

 船体の銅色は50年物のストック品(塗る機会が少ないので放置してあっただけだけれど)の銅色塗料が変質してしまい銅粉の色が変化したためと推測できますが、塗り上げたらちょうどいい感じに仕上がって気に入っています。

 舷側に並ぶ黒い四角い部分は開閉できる窓のようにも見えますが、復元船の写真を見てもよくわからず、位置決めに悩みましたが索の固定部分と干渉しないような位置でほぼ等間隔に並ぶような位置を模索して完成品のような位置に落ち着きました。

 この部分は黒塗りのアルミテープをカットして貼り付けてあります。

 前檣と主檣の一番下の帆のアップです。

 手製のバキュームマシンの精度が悪く型に十分絞り込めなかったためキットの部品との合いが悪く、接続には薄いプラバンだけでなくパテのお世話になっています。 近くでのぞき込むと仕上げの悪さがわかってしまいますが、遠目にはそうでもないです。


 米国旗はウィキで調べると27種類の変遷があるので、実船の活動時期に合わせて、1851年7月カリフォルニア州が出来て以降、1858年7月にミネソタが加わるまでの国旗をダウンロードしてパソコンで印刷して作りました。

 表裏の位置合わせに苦労しますがうまく位置が合わせられれば両面印刷1枚でできます。

国旗の左側に索梯子の下部についている滑車索の部品が見えますが、このアイデアはすごいです。

 2つの滑車を策で結んだ部品を1個のモールド部品で表現して後側に溝を切って索下部に貼り付けさせるこのアイデアには作っていて「すごい!」と思いました。

 3か月しか掛かっていないのに、すごく苦労したと思わせられたのが索張りですが、この写真は船首の3枚の三角帆を右舷舷側に並ぶ結索具に結びつけてある様子です。

 実物っぽく結びつけるために狭い場所にピンセットで糸を引きまわし、仮止めを繰り返しながら固定するのにとても苦労させられました。
 船首の巻き上げ機の部分と船首飾り彫刻の様子です。

 このキットの船首の飾り彫刻はただの渦巻きみたいな感じですがネット上にころがっている完成品写真の彫刻はなんだか違って見えるので、54年の間にバージョンアップしているのかもしれません。

巻き上げ機とクランクがよく再現されているのが分かります。

 船尾の舵輪の部分も結構な仕上がりなのですが後部船室の屋根の下になってしまって覗き込んでも暗がりの奥です。